石英(Quartz)物語 ―光学製品に欠かせない結晶の歴史と魅力―
「透明な結晶の中に、光学の秘密が隠されている──」
石英(Quartz)はカメラやレーザー、精密光学機器に使われる重要な素材です。見た目は美しい水晶ですが、その魅力は見た目だけではありません。今回は、石英とは何か、どこで採れるのか、そして光学製品に使われるまでの歴史をひも解きます。
石英とはどんな鉱物?
石英は二酸化ケイ素(SiO₂)からなる鉱物で、地球上で最も多く見られる鉱物のひとつです。透明〜乳白色でガラスのような光沢をもち、硬度も高いため傷がつきにくく、化学的にも安定しています。アメジストやローズクォーツなど、色付きの石英もあり、宝飾品としても古くから親しまれてきました。
石英はどこで採れるの?
天然石英は世界中で採掘されます。特に品質の高い光学用結晶の産地としては、ブラジル、アメリカ(アーカンソー州)、スイス、マダガスカル、ロシア、インドなどが有名です。ただし、大型で均質な天然石英は希少で、光学製品には十分な量を確保するのが難しいため、人工合成石英が重要になっています。
光学製品に使われるまでの歴史
古代では水晶は装飾品やお守りとして扱われ、光学機器への応用は限定的でした。
17世紀以降、望遠鏡や顕微鏡の発展に伴い、石英の屈折や分散特性が注目されます。
19世紀には研磨技術の向上により、分光器や顕微鏡、航空・軍事用光学機器でも採用が拡大。
1960年代のレーザー発明以降は、透明度と耐熱性を生かした精密光学や半導体製造に欠かせない素材となり、人工合成石英の登場で量産が可能になりました。
透明な結晶に秘められた技術
石英は単なる鉱物ではなく、光学製品の精度や性能を支える重要な素材です。天然と人工、古代から現代までの知恵と技術の積み重ねによって、透明な結晶の中に光学の歴史と魅力が詰まっています。


